教えて、春日井くん
「最低だな」
小学校からの友人の秋本葉に俺の考えを話すと、顔色ひとつ変えずに言った。潔癖の秋にとっては俺みたいな生き方は信じられないそうだ。
「つーか、それよりまほちゃん帰ってきたって? 大丈夫だったのか?」
「あー……まあ」
「なんだよ、その曖昧な返事」
家出をして行方不明だったまほは、ひょっこりと帰ってきた。
中学生だし金もないはずなので心配だったけれど、艶々のピカピカで帰ってきたのだ。むしろ家出をしたときよりも、髪がサラサラで服もいいものを着ていた。
「知らない人に拾われて、保護されていたらしいんだよねー」
「は? こわ。なんだよ、それ!」
「あ、いやさぁ……それが俺らの同級生らしくて」
女子中学生を誘拐する変質者が同級生にいるのかと、秋が憤慨している。
俺も最初聞いたときは、なにかされてるんじゃないかって思ったけど、別の意味で大変だったと言われた。
「まほ曰く、トランプをしたことがなかったから教えてあげたら毎朝ババ抜きをさせられてたらしくて」
「は?」
「しかも二人だからババ誰が持ってるかわかるからつまらないって言っても、何度もやらされるらしい」
「ちょっと意味がわかんないけど、とりあえず誰なんだよ」
そういえば、俺もフルネームまでは聞いていない。
向こうの家に連絡を入れて、挨拶をしていたのは父だし、俺は会ってもいないのだ。
確かまほはなんと言っていたか……
記憶をたぐり寄せて、変わった名前だったことを思い出す。
「そうだ。キリって人」
「キリ? そんな男いたっけ?」
「あ、女の子らしいよ」