教えて、春日井くん
綺梨ちゃんが立ち上がると、俺の目の前にしゃがむ。
そして膝の上に肘を乗せると上目遣いで見つめてくる。
そのアングルと体勢は色々とやばい。……狙ってる? 狙って……いや綺梨ちゃんだしな。きっとわざとだな。
俺の反応見て、楽しんでる。それか小説のシーンで得た知識か……。
「私が春日井くんを振るの?」
「……好みのタイプの男子が現れたっぽかった」
ただの夢の話だと笑って否定してほしい。もしかしたら呆れられるかもしれないけど、否定してくれるならそれでもいいや。
「目の前にいるのに」
「え?」
「私の好みの男子」
綺梨ちゃんが俺のことを指差して、微笑む。
いやいや、そんなはずない。きっと気遣ってくれているんだ。
「綺梨ちゃんが好きなのは、誰とも付き合ったことがないような男子でしょ」
「春日井くんと出会って、付き合い出してからは好みのタイプが変わったよ」
「……じゃあ、どんな人がいいの」
綺梨ちゃんが望むのなら、理想から外れないように努力する。飽きられず好かれていたい。
「余裕そうに見えるのに、照れ屋でかわいくて、一生懸命想いを伝えてくれて優しくて、心にウブを飼っていてかわいくてかわいい人」
「……半分くらい訳わからないし、そんな人のどこがいいの」
「ぜんぶ。今の春日井くんのことがぜんぶ大好きになっちゃったみたい」
照れもせずに天使のような輝かしい笑みで言われると、冗談だろうと笑い飛ばすこともできず、俺の方が恥ずかしくなってくる。
てか、綺梨ちゃんって俺が初めての彼氏のはずなのに余裕すぎない?