伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
「だが、話には裏がある」
「裏……ですか?」
「公爵からの使者をとらえて妨害したのはルミネオン王家だ」
「なんですって」
「両王家は裏でつながっていたのさ。ルミネオン王家はシュクルテル伯爵家に恩を売ることができ、サンペール王国はラベッラ公爵領を没収することができる。本来ならサンペールの混乱に乗じてルミネオンが戦争を仕掛けてもよかったわけだが、裏で手を握り合って家臣を犠牲にしたというわけだ」
「本当の悪者は両方の王家だったのですね」
ルクスが優しくうなずく。
「おまえの父は裏切り者でも卑怯者でもない。実直で人が良すぎたのだ」
そういうことだったのか。
エレナは納得していた。
お父様は裏切り者ではなかったのだ。
ならばおそらく天国でお母様と一緒に仲良く暮らしていることだろう。
それが分かっただけでも心が安らぐような気がした。
「それに、ミリアのことだが」と、ルクスは話を続けた。「公爵の娘のミリアだけはまだ赤ん坊で殺されることはなかったが、城から落ちのびさせた家来が金に目がくらんで奴隷として売り飛ばそうとしたのだ。伯爵はそれを知り、幼いミリアを保護した。だが、子供の身分を明らかにしてしまえばサンペール王家に狙われる。だから伯爵は使用人の娘として迎え入れたというわけだ」
「それは知りませんでした」
「おまえが生まれる前のことだからな。おまえが生まれ、侍女として姉妹のように育てていた伯爵夫妻の気持ちに嘘偽りはなかったと言うことさ。おまえが契約通りに王家に嫁いだときには、晴れてミリアを伯爵家の養女として家名を復興させようと考えていたのだ」
ああ、いかにも父らしい配慮だ。
エレナは涙を流していた。
父の名誉は守られたのだ。
「いいお話を聞かせてくださってありがとうございました」
「ミリアを恨まないのか?」
「いえ、お父様の潔白が分かればそれでいいのです。天国の母と仲睦まじく暮らしていることでしょうから」
そして、エレナは手を合わせた。
「今はただ祈るだけです」
「親孝行だな」
「これがわたくしの特殊能力なのですか?」
「さあな」
ルクスは一人、先に歩き出す。
エレナはその黒光りするマントの背中を追った。
「裏……ですか?」
「公爵からの使者をとらえて妨害したのはルミネオン王家だ」
「なんですって」
「両王家は裏でつながっていたのさ。ルミネオン王家はシュクルテル伯爵家に恩を売ることができ、サンペール王国はラベッラ公爵領を没収することができる。本来ならサンペールの混乱に乗じてルミネオンが戦争を仕掛けてもよかったわけだが、裏で手を握り合って家臣を犠牲にしたというわけだ」
「本当の悪者は両方の王家だったのですね」
ルクスが優しくうなずく。
「おまえの父は裏切り者でも卑怯者でもない。実直で人が良すぎたのだ」
そういうことだったのか。
エレナは納得していた。
お父様は裏切り者ではなかったのだ。
ならばおそらく天国でお母様と一緒に仲良く暮らしていることだろう。
それが分かっただけでも心が安らぐような気がした。
「それに、ミリアのことだが」と、ルクスは話を続けた。「公爵の娘のミリアだけはまだ赤ん坊で殺されることはなかったが、城から落ちのびさせた家来が金に目がくらんで奴隷として売り飛ばそうとしたのだ。伯爵はそれを知り、幼いミリアを保護した。だが、子供の身分を明らかにしてしまえばサンペール王家に狙われる。だから伯爵は使用人の娘として迎え入れたというわけだ」
「それは知りませんでした」
「おまえが生まれる前のことだからな。おまえが生まれ、侍女として姉妹のように育てていた伯爵夫妻の気持ちに嘘偽りはなかったと言うことさ。おまえが契約通りに王家に嫁いだときには、晴れてミリアを伯爵家の養女として家名を復興させようと考えていたのだ」
ああ、いかにも父らしい配慮だ。
エレナは涙を流していた。
父の名誉は守られたのだ。
「いいお話を聞かせてくださってありがとうございました」
「ミリアを恨まないのか?」
「いえ、お父様の潔白が分かればそれでいいのです。天国の母と仲睦まじく暮らしていることでしょうから」
そして、エレナは手を合わせた。
「今はただ祈るだけです」
「親孝行だな」
「これがわたくしの特殊能力なのですか?」
「さあな」
ルクスは一人、先に歩き出す。
エレナはその黒光りするマントの背中を追った。