伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
 そうやって服を交換すると、自然に立場も入れ替わったような気がして、お互いになりきって演じる遊びも楽しかった。

 エレナが床に雑巾がけをしていると、頭上で高笑いが聞こえたものだ。

『もっと丁寧になさいな、エレナ。埃がたまっていますわよ』

『はい、ミリアお嬢様』

 意地悪な伯爵令嬢になりきったときのミリアの演技は見事な物だった。

『下手くそねえ。やりなおしなさいな』

『ちょっと、ミリア、わたくし、そんなに意地悪じゃなくってよ』

『口答えをするのですか。おまえはクビです。出ておいきなさい』

 あの時は演技とは分かっていても、悲しくて涙が出そうになってしまったものだ。

 でもおかげで、自分がミリアにずいぶん頼っていたことも自覚できたし、甘やかせてもらっていたことに感謝をしたものだった。

 皮肉屋で、ときには悪ノリもする侍女とそんな遊びをしたのも、今となってはいい思い出だ。

 でも、そういった幸せだった時間がすべて嘘偽りでしかなかったとは全く気がつかなかった。

 ミリアはそんなにわたくしを恨んでいたのでしょうか。

 あんなに優しかったのに。

 どちらが本当のミリアだったのでしょうか。

 エレナはもう会うことのない彼女の幸せを祈った。

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