伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
「しっかりしてください」

 あたためてやろうにも、こちらの方が凍えてしまう。

 しかも彼はエレナをきつく抱きしめて離そうとしない。

 闇の中で抱きしめられたままエレナは身動きがとれなかった。

「うぅ……エレナ……」

「しっかりなさって。どうしたのですか?」

 彼はうなり声を上げるだけだ。

「ルクス……しっかり、ルクス……」

 どうなってしまうというのですか。

 抱きつかれるままにエレナもまた彼をしっかりと抱きしめた。

 凍りついてもいい。

 彼を救えるのならどうなってもいい。

 わたくしにあたえられるものがあるとするなら、すべてを奪い去ればいい。

 衣服を剥ぎ取られ、密着した肌から体温を奪われ、それでもなお彼はエレナをむさぼり尽くそうとする。

「あぁ……エレナ……」

 いいのです。

 それが望みなら、わたくしはすべてを投げ出しましょう。

 ……それで、いいのです。

 エレナは祈りを唱えた。

 光あれ!

 それがどのようなものであれ、わたくしたちの行く末を照らすなら、冷酷な痛みも二人を結ぶ絆となるでしょう。

 彼女は刺し貫かれ、その瞬間、意識がはじけ飛んだ。

 闇に取り残されたのは行き場のない切ない想いだけだった。

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