イミテーション・ハネムーン




「ねぇねぇ、小山田さんはどうするの…?」

「え……?」

まさか、私まで訊かれるとは思わなかった。
満田さんが知りたがってるのは、明日から始まるゴールデンウィークの過ごし方。
さっきまで、四、五人で集まって、そんな話をしてたのは聞こえてたけど、まさか、わざわざ私のところまで来るなんて思ってもみなかった。
なんて答えようかと少し迷ったけれど…



「うん…ちょっと旅行にね…」

「旅行?え?もしかして、彼氏と…?」

「……うん。
順番は違うんだけど…実はハネムーンに行くの。」

「えーーーーーっっ!」

少し離れたところにいた同僚達にも聞こえたらしく、みんなが私の方を向いて、目を丸くしていた。
やがて、みんなが私のところにやってきて、質問攻めが始まった。



「どこに行くの?」
「いつ結婚するの?」
「どんな旦那さんなの?」
「仕事はやめるの?」



私は、みんなの質問に笑顔で答えた。



そう……最後くらい『幸せな人』に見られたかったから……



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