イミテーション・ハネムーン
「僕の友達も…」

「え?」

「僕の友達にもそんな体験をした人がいたんだ…
その人は、彼女のことを真剣に愛してた…だけど、彼女は本気じゃなかった。
別れ際に、彼女はとても酷いことを言った…
……友達は、死にたくなるほど傷付いた…
なのに、そんな仕打ちを受けてもなお彼女のことを憎めなかった…」

それは、友達ではなく、圭吾さん本人のことじゃないかと思えた。
それほど、彼の言葉には実感がこもっていたから…



「圭吾さん…そのお友達は、それからどうなったの?」

「それなりに元気にやってるよ。」

「……どうやって、立ち直ったのかしら?」

「生き甲斐を見つけたんだよ。」

「……生き甲斐?」

圭吾さんは微笑みながら頷いた。



「そう…傷付いた人を少しでも癒すってこと…」



その時、私は確信した。
やはり、さっきの話は圭吾さん自身のことだったんだ。
圭吾さんも私と同じような経験をして…それで、この仕事に就いた。
圭吾さんがごく自然に振る舞えるのは、ただ、仕事としてやってるからじゃなく、お客を少しでも慰めよう、励まそうと思って気を遣ってるからなんだと思ったら、私の瞳から涙がぽとりと零れ落ちた。



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