Livre magie〜桜色の魔女〜

僕の頬を冷や汗が伝う。体が震え、今自分が感情が恐怖だとすぐにわかった。

「おい」

低い女性の声に肩が震える。怒りを含んだ声だ。その声は僕の近くから聞こえてくる。体がますます震え、見たくないと心が拒絶する。でも、僕は顔を上げてしまった。

僕の目の前に、明るい色に染めた髪の女性が仁王立ちで立っていた。その顔を見た刹那、僕の口から悲鳴が小さく漏れる。ああ、この人はーーー。

「あんたなんか産まなきゃよかった！！」

そう女性が叫ぶように言い、また僕の足元にお皿が飛んでくる。破片が僕の足をかすった。

「ッ！！」

痛い。体にできた傷も、心を抉られる冷たい視線や言葉も、全てが僕を傷付ける。これは夢だ。僕がノワールとして転生する前の、太宰修也（ださいしゅうや）として生きていた頃の記憶が夢になっている。

パンッと乾いた音が響いた。女性ーーー母親に叩かれたんだ。痛みまでリアルだなんて、僕はどれだけあの頃の記憶に囚われてるんだろう……。