無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

ウソつくのは疲れるから


ただひたすら走った。
電車に乗り、いつもより1秒でも早く着いてほしいと願った。

駅に着き、人ごみをかき分けて急いで改札を飛び出す。
善にーー会いたい。



「……若菜?」



それなのに……どうして、あなたがここにいるの?

会いたいのは、名前を呼んでほしいのは善なのに。
後ろから肩を叩いてきたのは……最も会いたくない、秦くん。



「こんな時間に急いでどうしたの?」

「別に……じゃあ、また……」

「待って! これを受け取ってほしいんだ!」



塾までのもう少しのところ、お店が並びはじめる場所で秦くんのその言葉に私は足を止めざるを得なかった。

秦くんの手には小さなピンクの紙袋。
蓋がされていて、ハートのシールが貼ってある。



「……これは、なに?」

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