無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

上半身を90度曲げるほど頭を下げた私。

そんな私に柊木善は「ふっ」と鼻で笑う。



「なんで、笑うの……?」

「真面目だなと思って」



顔を上げた私の視線の先には、少しだけ口角を上げている柊木善がいた。



「もういいよ、俺も怖がらせちゃったし」

「……たしかに」

「たしかにって。怖かったんだ?」



顔を覗かれ、あのときのことが頭に浮かぶ。

怖いというよりは、ドキドキのほうが勝っていた気もするけど……。

そんなこと本人に言えるはずない。



「キスしたことないんだから怖いに決まってるでしょ……」

「……付き合ったこともないの?」

「勉強一筋で生きてきたんだからあるわけない」

「もったいないね、こんなにきれいなのに」

「なっ……」



曇りひとつない真っ直ぐな目で私の目を見る柊木善。

この人……相当モテるんだろうな。

特に何も考えずに女の子が喜ぶことを平然と言ってしまうんだもの。


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