人権剥奪期間
「あ……恵美?」


名前を呼ばれて3人が同じクラスの生徒たちであることにようやく気がついた。


最近では生徒も先生も見れば敵として認識してしまうため、ろくに顔を見ることもなくなっていたのだ。


あたしは返事ができずに後ずさる。


すると1人が戸惑った表情を浮かべた。


「ねぇ、そんなにおびえなくていいじゃん。あたしたちなにもしないし」


そう言われても信用はできなかった。


そのとき「ごめん、遅れて!」と声が聞こえてきてもう1人の女子生徒がかけてきた。


エリカ……。


あたしは目を見開いてエリカを見つめた。


エリカもあたしを見つけて立ち止まった。


「え、恵美……大丈夫?」


エリカが引きつった笑顔で聞いてくる。


「体操服、すごく汚れてるけど」


そう言われてあたしは自分の姿を見下ろした。


商品になってから1度もお風呂に入ってないし、逃げ惑ってひどく汚れている。


今の彼女たちから見れば明らかに浮いている存在だろう。


あたしは下唇をかみ締めた。


「っていうか、なんか臭くない?」


今まで黙っていた子が不意にそう言って笑った。
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