人権剥奪期間
☆☆☆

部室棟の廊下には誰の姿もなかった。


物音もしなくて、少し不気味なくらいだ。


ためしに近くにあった文芸部の部室のドアに手をかけてみる。


しかし、鍵がかけられていた。


夜になったらすべての教室のドアが開かれるけれど、今は施錠されているみたいだ。


隣の映画部の部室も、その隣の漫画部の部室も鍵がかかっている。


これじゃ休める場所がない……。


本館へ移動すればいいけれど、それはリスクが高すぎた。


仕方なくトイレへ戻っているときだった。


廊下の前方から話し声が聞こえてきてあたしは足を止めた。


ちょうど渡り廊下を渡ってこちらへ向かってきているのだ。


あたしは咄嗟に後ろを振り向いた。


どの教室も鍵がかけられていて入ることはできない。


下の階に逃げるしかない!


そう考えて体を反転させようとしたときだった。


3人の女子生徒たちが廊下に顔を出したのだ。


驚きのあまり硬直してしまう。


それは相手も同じで、あたしを見て立ち止まり唖然とした表情を浮かべた。
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