セフレのテラダ
少しの沈黙。

もうすっかり寒い。
秋が終わってしまった。

「俺、信じてないし。」

テラダの乾いた声が冬の空に消える。

「自分しか信じてない。ま、女の子は大好きだけどね。」

なぜか悲しい響きだ。

「今日は俺自分ち帰るわ。」
「えっ。」

小さく驚く私。
既に、テラダのつま先が私とは違う方を向いている。

てっきりいつも通りうちに来るのかと思っていた。

「そっか。じゃ。」
「じゃ。」

テラダは地下通路に降りずに、そのまま表通りを真っ直ぐ歩いていく。

私は少しその背中をぼんやり眺め、そして一人階段を降りていった。

この時間まで飲んだのに、うちに来ないのは初めてのことだった。

テラダはそうやって一人を選ぶんだ。
分かってはいた。
でもなぜだろう。

ぼんやり悲しい。
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