セフレのテラダ
「年末年始どうすんの。」

ふいにテラダが聞いてくる。

「30日から帰るよ。」
「そっか。じゃあ、これが年内最後か。」

私はまっすぐ前を向いたまま「そうだね。」と答える。

と、急にテラダの顔が近づく。

そして一瞬のキス。

思わず驚いてテラダの顔を見る。
テラダはいつもみたいにヘラッと笑ったまま私を見下ろす。

なんのキス?

「そうだ、これ。」

テラダがポケットから小さな袋を取り出す。

「え、なにこれ。」
「開けてみて。」

驚きを隠せないまま、包装のテープを剥がす。

中から出てきたのは、私が今日少し見てたネックレス。
普段から着けられそうなゴールドのすごくシンプルなやつだ。

「なんで」
「いや、欲しそうにしてたじゃん」
「でもなんで」
「喜ぶかな、って」

少しそっけなく言うテラダ。

こんなこと初めてで、どう反応したらいいのか分からない。

「ありがとう」

私が言うとまたテラダは笑った。

私はすぐつけてみる。
やっぱりすごく可愛い。
シンプルで、上品で、でもアクセントもあって。

「いいじゃん」

テラダが褒めてくれる。

昨日も今日も、ずっと私の胸はギュッと苦しい。

私の手からすり抜けていくようなテラダという存在が、私を苦しめている。

私はたぶん、とっくにテラダのことを好きになっている。

テラダが笑いながら私の手をまたギュッとして、パッとする。

なんでこんなことを平気でするの。

これ以上一緒にいたら、私は絶対にテラダに溺れる。

そんなことに気付いてしまうなんて。

私はクリスマスの夜景にまた視線を戻した。

テラダのことが、大好きだ。
どうしようもなく、大好きだ。
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