セフレのテラダ
引き戸を閉めて、ふうーと息が漏れる。

あー疲れた。
なんで合コンって疲れるんだろ。

置かれてる下駄を履く。

カランコロンさせながらトイレを探す。

いろんなところから賑やかな声が漏れてくる。

同じような人間たちでこの世は溢れてる。

きっとテラダもどこかでこうして飲んでるのかもしれない。

トイレから戻ってくる時、別の個室から男性の大きな声が聞こえてきた。

「おい、テラダー!どこ行くんだよー!」

思わず立ち止まる。

いるの?

すぐ近くだ。

引き戸が開く。

と同時に聞こえた「トイレ行くんだよ!」という声。

顔を見なくても分かった。

他人だ。

案の定、全然見覚えのないテラダさんだった。

何を期待したんだろう。
ばっかみたい。

私は自分たちの個室に戻る。
すぐに牧くんにおいでおいでと隣に呼ばれる。

うん、丁度いいかもしれない。

隣に座ると、誰にも聞こえないほどの声で牧くんが言う。

「この後、二人で飲まない?」

その目を見る。
牧くんの少し意味を含んだような笑顔。



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