セフレのテラダ
春4月。

南さんからまた合コンに誘われた。
これで何回目だろう。

相手は国家公務員らしい。

まだ少し寒さの残る中、待ち合わせ。

夜桜。
こんな儚い美しさ、ずるい。
みんなが足を止める。

他にも咲いてる花はあるのに。

やっぱり今しか見れない桜の前に人は心を奪われる。

ちゃんと時間通りに全員揃った。
そこらへん、さすが公務員って感じ。

私もすっかり慣れた様子で「こんばんは〜」と言えるようになった。

人見知りもかなり減った。

瞬時に相手を見る癖もついてしまった。

特徴と名前も覚えるのが早くなった。

今日は75点。

珍しく男女交互に座った。
掘りごたつの個室。

決まって自己紹介から。

女のメンバーはいつも大体一緒で慣れてる。
私も6年目になった。

同い年の人がいた。

年齢を言うと、ばっちり目が合った。
微笑み返すくらい、慣れた。
別に興味がなくても。

1時間くらいして、隣に同い年の彼が来た。
牧くん。

「『さあや』って漢字でどう書くの。」
「さんずいに少ないの沙に、彩りの彩で、沙彩。」
「へー珍しいよねえ。俺初めて聞いた。」

そんな感じで顔の距離も近づく。

中の中かな。
キスもできる。

そんなこと考える。

「地元どこ?」
「私、千葉で」
「俺も千葉、俺も千葉。」

少し話が盛り上がる。

地元が近い。

「どこ高、どこ高?」

すごいノリノリな彼。

「ごめん、ごめん、ちょっとトイレ行ってくる。」

私は笑顔でごめんなさいして個室を出る。

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