白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
 ただでさえ、ショウとの仲を疑われて険悪になったのだ。これでなおショウの肩を持つというのは、悪手でしかない。それはエドの婚約者として相応しくない決断だともわかっている。

 だけど、

「実際、私は五体満足無事に生きています。それなのに、そんな厳しい処罰が必要とは思えません! それに、ショウさんは必ずやランデール王国の食文化の発展に役立つ知識や技能を持っています。そのような人物を安易に亡くしてしまうのは、国としても大きいな損害だと思います!」

 私が考えうる目一杯の「それっぽいこと」を言うと、エドはニコニコと私を見やる。

「君にしては頑張って意見したようだけど……ねぇ、その意見が僕の婚約者『リイナ=キャンベル』として相応しいものだと、本当に思っているの?」

「いいえ、これは『私』の意見です」

「ふーん……そっか」

 顎を撫でて、一瞬視線を落とす。再び顔を上げたエドは、やはり微笑を浮かべていた。

「まぁ、実害に遭ったのは君だしね。それならこうしようか。君がとある条件を受け入れてくれたら、彼の処遇を見直すよ。無罪とは言わないけど……軟禁ってところかな。監視は常に置かせてもらいつつ、君の言う通り今まで以上、国の食事事情の発展に協力してもらうよう、国王に進言すると約束しようか」

「……軟禁とは、牢屋に入れるってことですか?」

「そうだね。でも落ち着いたら、今まで通り厨房に入ってもらうってことでどうかな? 確かにせっかくの労働力を余らせておくのは、勿体ないしね」

 その案に、私は胸を撫で下ろす。監視が付くとはいえ、今までと変わらない生活。むしろショウの身の安全も確保できて、最善の案ではないだろうか。

 ショウに目配せすると、なぜか彼は苦虫を噛み締めたような顔をしていた。

 それでも、私はエドに「それで、条件とは?」と尋ねる。
 すると、彼はまっすぐに私を見てこう言った。

「僕との婚約破棄」

 胸の鼓動がうるさくなる。

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