スイレン ~水恋~
あたしは首を横に振る。

お兄の披露宴で気安く話しかけてきたのは、ただのふざけた男だった。スタートはマイナス。今思えば胡散臭そうでもなんでも、お兄以外に気を引かれたのが初めから別格だったんだから。

「きっと隆二じゃないと駄目だったの、ランプの精は」

上手く言えない。言えないけど。偶然、必然、運命、そのどれかでも、どれでもなくてもきっと。あたしには隆二だったの。

「そっか」

底の見えない笑い顔が見下ろした。甘く優しく、あたしを突き抜けてもっと遠くを見てる。気がしてた。




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