スイレン ~水恋~
扉を閉じ、入り口に向き直る。ナチュラルな質感のウッドドア。ハンドルに手を掛けると、鍵はかかってない軽い反応。音を忍ばせ前屈みに恐る恐る開いてく。と。

「・・・おはようございますお嬢」

「きゃあっっ」

いきなり死角から降ってきた声のせいで、不格好な悲鳴を上げる羽目になった。

「いるならいるって言いなさいよ、志田のバカぁっ」

「コソ泥みたいに出てくる女がいるとは思わないでしょう」

「あたしを勝手に眠らせた男には言われたくないわよ?!」

「・・・具合が悪いかと心配しましたが」

反発して上目遣いに()めつければ、とてもそうは思えないうんざり顔で返る。

「そんな格好で朝から喚けるなら、早く風呂を済ませて一階(した)に降りてもらえませんかね」

言われて我に返ったあたしが、下着姿を晒してることにもう一回不格好な悲鳴を上げたのは、言うまでもなかった・・・・・・。
< 179 / 293 >

この作品をシェア

pagetop