スイレン ～水恋～

テーブル越し、場違いなスーツ姿の志田はプラスチックカップのアイスコーヒーを一気に３分の２も飲み干す。サブリナパンツにフラットシューズのあたしに比べたら、そりゃ疲れるわよね。上着まできっちり着込んでおまけに革靴だし。

四人掛けの席の半分はショップバッグが占拠。上々の戦果。アイスチョコラテで甘く癒やされながら、ふと視線を巡らせる。

夕ご飯にはまだ早い半端な時刻にも関わらず、見渡す限り、家族連れに友達同士や男女の二人連れで賑わってる。あたしと志田は傍からどう見えるんだろう。･････････。兄妹に思われるのはちょっと嫌。

通路側の隣の席には自分と年が変わりなそうな、ひと組の夫婦とベビーカー。学生時代の友達でも結婚して子供を授かってる子がいる。普通にそういう年頃なのに、今まであんまり自分に置き換えて実感したことがなかった。

なんだか秋生ちゃんに言われた言葉が足許にひた寄せる。嫁(い)き遅れてどこかの組のボンクラ息子をあてがわれるくらいなら。自分で見つけて自分で拾いたい。

むしろ堅気(カタギ)の男にしろってお兄は言ってくれてたっけ。日の当たる場所で堂々と幸せになれって。

胸の内で息を逃した。色んな感傷が綯(な)い交ぜになった、ただ心許ない吐息を小さく。