壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
ある日、会計役の新選組隊士の一人が公金、新選組に必要な刀などを購入するために少しずつ積み立てられているお金が半分ほど無くなっていたのだ。

そのことに気がついた会計役の隊士は近藤先生に報告し、近藤先生から公金を盗んだ犯人を捜すように命じられたのだった。

調べ役の隊士は盗んだ公金が何に使われたのかまで調べる必要があったので、早急に盗んだ人を特定する必要があった。

しかし私たちが犯人を捜しているということが盗んだものに伝わっていたのか2月が経過しても誰も公金を盗むそぶりを見せる隊士はいなかった。

外部から侵入した者の仕業だったのではないかと調べ役の中で結論がつき、それを近藤先生には報告したものの、私は納得することができずにいた。

外部から新選組の屯所に侵入することはほぼ不可能であり、万が一侵入できたとしても屯所の内部を正確に把握していないと公金が保管されている場所にたどり着くことは不可能だったのだ。

「今は自分の仕事に専念しろ。

お前が納得いく結果を出すまでは見廻りに行かなくてもいい。
だから、途中で投げ出すなよ。」

私が連日ひとりで公金を盗んだ犯人を捜していることを知った斎藤先生は特別に他の仕事をしないでもいいという許可をくれたのだった。

私は斎藤先生に感謝の意を述べそれから不定期に公金の保管してある部屋に隠れ犯人が来るのを待った。
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