シュガー ガール
桜の花びらがチラリチラリと舞い散る季節。



新品の制服に袖を通す。

白いシャツに、黒のジャンパースカート。仕上げに赤いスカーフを結んだと同時にインターフォンが鳴り響いた。



つい数日前まで小学生だった。

今日から、中学校になる。その事実が私をグンと大人になった気持ちにさせてくれる。



そんな事を考えながら、玄関に向かう。

ゆっくりと扉を開けると、2歳年上のお隣さんで有る陸斗が立っていた。



「明日菜も中学校か!!」
「うん!大人になったでしよー?」



陸斗は私が緊張しないで話せる、数少ない友達の1人。



「まだまだ、ガキだよ!!この前まで小学生だった奴が大人なんて言っても説得力がないわ!!」



ケラケラ笑いながら、酷い事を言う陸斗。

でも、そうやってからかわれる事すら嬉しいのは、陸斗の事が好きだからかも知れない。



もちろん、この感情を口に出せる程に自分に自信が有る訳でもない私は、陸斗に対する思いを胸に閉じ込めている。



「陸斗。酷い……」
「だって、明日菜ガキだし!」



からかわれているが、嫌な気は全然しない。


陸斗は、嫌われ者の私に話し掛けてくれる優しい心の持ち主だ。
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