エセ・ストラテジストは、奔走する
「千歳。」
「っ、お、おはよう。」
「何してんの。」
「……えっと。ごはんを、作ろうかと…」
2人とのLINEトークを経て迎えた決戦の日。
こっそりとベッドを抜け出して、台所へ向かったはずなのにすぐに見つかってしまったらしい。
恐る恐るそう告げると、目の前の彼は私の発言に眉を顰めたままこちらをじ、と見つめていた。
少し寝癖で乱れた焦茶色の髪は襟足が短めで、作り込まれすぎていないマッシュヘアは整った端正な顔にピッタリで、より小顔が際立つ。
上下ともゆるいスウェットに身を包んでいるけど、
スタイルの良さが自ずと分かるから驚いてしまう。
早朝でもこの人は格好良さに溢れていて、鼓動が簡単に速まる私はいつまでも全然、耐性がつきそうにない。
「…なんで。」
「え?」
「料理、下手なのに。」
ストレートな言葉が、丸腰の私に刺さりまくって、
その痛みに体のバランスを崩しそうになった。
…彼氏にそう思われてるの、まあ自覚はしていたけど悲しい。
大学時代は、お互い実家だったから料理をお披露目する機会はなかなか無くて。
就職して2人とも東京に来て、初めて彼の家に行った時に作った料理は散々で「もう作らなくていい」と真顔で一蹴された、辛すぎる思い出なら、ある。
それからすぐ、仕事で夜中まで働くような生活が始まった彼の家に行くのは、当然躊躇われた。
だから、大体会うとなったら金曜日の夜遅く、私の家に来ることが多い。
彼は平日の疲れを補うように、次の日はお昼近くまで寝ているので、私は昨日こっそり買っておいた食材と時間をたっぷり使って(失敗するのも込みで)遅めの朝食を作ろうと考えていたのだけれど。