イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
「両親も、祖父母も、本当に俺のことをかわいがってくれたし、優しく、厳しく、大切に育ててもらったよ」
「うん」
遥を見ていれば、愛されて大切に育てられたんだろうなってわかる。

そこまで話した遥は目の前に置かれたペットボトルの水に口をつけ、フッと息を吐いた。

「それでも、色々言う外野は多くてね。割と屈折した子供時代を過ごしたんだ」
遥の顔がなんだか寂しそう。

「お金持ちの家にも、悩みはあるのね」
嫌味ではなく素直な感想として口にした。

「当たり前だろ。周りの大人たちからは必要のないお世辞を言われるし、取り入ろうと近づいてくる人間も多いし、子供の前だと思って平気で悪態つく大人だって、珍しくはない」
「ふーん」
なんだか大変そう。

「その上俺は血のつながらない養子だし、7歳の時には実子である弟が生まれてさらにうるさく言う人間が増えた」
「・・・」

さすがに、少し切なくなった。

「育った環境のせいにするつもりはないけれど、つい周りを観察してしまうし大人の顔色を見てしまう、俺はそんな子供だった。だから今でも、相手の行動が読めてしまうんだ」

「そうなんだ」

周りに気をつかっているからこそ周囲の動きが気になるしつい先を読んでしまうのかもしれない。
こう見えて、遥は苦労人らしい。
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