イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
「ご飯、できたけれど」

さっきより書類の山が大きくなったリビングに声をかけた。

仕事のきりが悪ければ、もう少し待ってもいいし。いらないと言われれば冷蔵庫にしまっておけばいい。仕事の邪魔をするつもりはない。

「ああ」
遥は手を止めて散らかった書類をかたずけだす。

どうやら食べてくれるらしいと確認して、萌夏はダイニングに料理を並べた。



「うわ、すごいね」
テーブルを見た瞬間、遥が声を上げた。

「そお?」
そんなに手の込んだものを作った覚えはない。

「いや、十分すごい」

「そんなことないでしょ。私が作ったのは鮭ときのこのホイル焼きと、揚げ出し豆腐。あとは、残った野菜でお味噌汁を作っただけ。小鉢やサラダはみんな冷蔵庫の作り置きだから」

「でも、ありがとう。いただくよ」
「うん」

遥の口からありがとうって言葉が出たことが、萌夏は不思議だった。
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