イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
ブブブ。
テーブルの上に置かれていた遥の仕事用携帯が震えた。

ん?
こんな朝早くから、珍しい。

「もしもし」

朝食を食べる手を止めて電話に出た遥。
その声は心なしか不機嫌に聞こえる。

「ああ、ああ、何で?・・・わかった」
少し不満げに電話を切った。


「どうかしたの?トラブル?」
萌夏も気になって聞いてしまった。

本来なら仕事の話に口は出すべきではない。
でも、一緒に暮らしていれば気にはなる。

「秘書が来るって」
「ここへ?」
「ああ」

それはその、自分のボスが同棲を始めた女の顔を見に来るってこと?
そもそも、遥に秘書がいるって、萌夏は知らなかった。

「キレイな女の人だったり、する?」
すっぴんジャージ姿の自分を見返して、声が小さくなる。

「違うよ。男」
「ふーん」

萌夏の反応を見ておかしそうに笑った後、再び食事を再開させる遥。

萌夏はこのままここにいるべきなのか、着替えてきた方がいいのか、それとも部屋に入っていた方がいいのか、考えてしまった。
同棲とは言え居候だし、特別な感情があるわけでもなく、要は部屋を貸してもらっただけ。
であるなら、これ以上遥のプライベートにかかわるべきでない気もする。

「いいから食べろよ。今から来るのは遠慮するような奴じゃない」
「そんなこと言ったって・・・」
すっかり手の止まってしまった萌夏。

ちょうどその時、

ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。
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