イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
居候中の萌夏にとってやることと言えば掃除洗濯と食事の用意。
それさえしていれば、住む所も食べる物も苦労はしない。
遥の厚意に甘えれば、短い時間のバイトをしながら大学に通うこともできる。
でも、萌夏にはそんな生活を送ることは考えられなかった。

ベーカリーでのバイトを辞め遥のマンションに居候を決めてから、萌夏は大学に休学届を出した。
まずはバイトと一人で住む所を探し、引っ越しをして、一年くらい必死に働いてお金を貯め、それからもう一度大学に行こうと決めた。
それがけじめに思えた。


「条件のいいバイトって、なかなか無いのよね」

駅前のコーヒーショップで求人サイトの検索。
毎日いくつか目星をつけて電話をしてみるけれど、なかなかいい返事がもらえない。
理由はわかっている。萌夏には住所がないからだ。
住所不定ではバイトだってなかなか見つからない。
だからと言って遥の住むタワーマンションの住所を書けば、余計に怪しい人だし。

「贅沢言ってないで、夜のバイトも探そうかしら」

昼間に比べれば夜の方がお金がいいし、審査だって厳しくはない。
さすがに水商売って言うと抵抗があるけれど、皿洗いくらいならできると思うし。

「よしっ」

自分に気合を入れ萌夏は夜のバイトを探し始めた。
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