イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
水商売なんてという思いが萌夏の中になかったと言えば嘘になる。
キレイに着飾ってお酒を注ぐだけ。そんな認識しかなかった。
しかし、それが間違いだったとすぐに気づいた。

「あちらのお客さんはゆっくりとお酒を楽しみたくていらしているの。だからペースに合わせてお酒をすすめて、お話を聞いて差し上げてね」
「はい」

ホステスさんたちはみんなお客さんの好みを熟知していてそれぞれに合った接客をする。
無駄にお酒をすすめようとはしないし、時には楽しく盛り上げ、時にはじっくりと話を聞く。
本当にプロなんだと痛感した。

「吹雪ちゃんお願いします」
「はい」

お店では吹雪と名乗った。
本名が萌夏だからその反対の名前にしてみた。
はじめこそホステスなんて絶対に嫌だと思っていたけれど、ママやお店の先輩たちを見て気持ちが変わった。
それに、週2日のバイトで今まで以上の収入になるなら悪くはない。
遥にはコンビニのバイトだと嘘をついたけれど、気づかれなければ大丈夫。
空いた昼間の時間にも週3でカフェのバイトを入れ、この調子なら来年には大学に戻れると萌夏は浮かれていた。
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