イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
「小川さん、ちょっといい?」

珍しい。遥に呼ばれた。
次長室から顔だけ出して、萌夏に手招きしている。

「はい」
返事をして立ち上がる萌夏。

何だろう、何かしたっけ?
毎日顔を合わせている同居人なのに、こうして呼ばれれば緊張してしまう。
一応上司だしね。



「入って」
次長室に入った途端、ドアを閉められた。

え、何?
萌夏は一瞬動きが止まった。

えっと、これはどういう状況だろうか?

目の前のソファーに礼さんと高野さん。入口に近い一人掛けの椅子に雪丸さん。遥は自分のデスクに寄り掛かるように立っている。

「ごめんね、萌夏ちゃん」

訳が分からず立ったままの萌夏に、なぜか謝る礼さん。

「えっと・・・状況が」
誰か今何が起きているのか説明してほしい。

「先日の来客、知り合いだったのか?」
「え?」
遥の言葉の意図がわからず萌夏は聞き返した。

「何か知っていたから、礼に調べてくれるよう頼んだんだろ?」
「いや、それは・・・」

ははーん、礼さんがあのお客さんを調べていることがばれたのかぁ。
でも、それで全員集合?

「結論から言うと萌夏ちゃんが正しかった。俺の調査が甘くてあいつが詐欺師だって気づかなかったんだ」
高野さんが悔しそうに吐き捨てる。

「お前の責任ばかりでもない、会社としてもう少し詳しく調べるべきだった」
雪丸さんは高野さんの味方みたい。

「いいじゃない、契約前だったんでしょ?事前に防げてよかったじゃないの」
礼さんは何がいけないのよって感じ。

「萌夏、お前は何を知っているんだ?」
入り口近くに立ったままの萌夏に遥が近ずく。

「いや、私は別に・・・」
< 83 / 219 >

この作品をシェア

pagetop