イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~

雪丸の苦悩

4歳も年下のボス。

雪丸が高校生で、遥はまだ中学生のころに出会った人生の相棒。
頭がよくて、正直者で、初めのうちはかわいい弟のように思っていた。
金持ちのボンボンにありがちな奢りもなくて、一緒にいて楽しかった。


「すみませんでした」
遥かに叱られた後、礼が雪丸のデスクの前に立った。

しおらしく頭を下げる姿に、何か言ってやろうかとも思ったがやめた。
礼だって馬鹿じゃない。詐欺師の正体がわかった時、雪丸や遥に報告することもできた。
でもそれをしなかったのは非難の矛先を自分に向けるため。
実際、社内では詐欺師に騙されたことへの責任問題よりも礼がなぜそのことに気づいたのかの方が話題になっている。
ただでさえ遥の口利きで入社した礼は陰口をたたかれることが多いのに、今では完全に時の人だ。

「ご迷惑をかけてすみません」
黙ったままの雪丸に、もう一度謝る礼。

「言葉と行動が伴っていない」
少し声を落とし、上目使いに睨みつける。

こうやってしおらしく謝ってはいても、同じ状況になればまた同じことをするだろう。
礼はそういう奴だ。
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