サプライズは素直に受け取って。
ニコッと微笑む彼女が可愛くて今すぐに、話したい気持ちをぐっと押さえる。
「はい。
 今日はお誘い頂き、ありがとうございます。」

「いえいえ、こちらこそ、ありがとう。
 四季ちゃん。
 お誕生日、おめでとう。」
「えぇ!!!!」

(ごめんね。僕はすべて知っているんだ。)

「合ってるでしょ?
 僕は……今日は純粋に四季ちゃんの誕生日を祝いに来た。
 だから、四季ちゃんもそのつもりでいてね。」

固まっている彼女のグラスに"乾杯"と言って、手に持っているグラスを当てる。
まだ、何も言えない。
言ってしまったらお互いに食事が喉に通らなくなってしまうと思うから。

「……はい。
 恥ずかしくて、言えなかったんですけど。
 ……今日は誕生日です。
 お祝いして下さって、ありがとうございます。
 この、シャンパン凄く美味しいですね!
 甘くて炭酸も優しくて、少しフルーティーでグビグビ飲んじゃいそうです。」

「改めて、おめでとう。
 ほら。お酒はあまり強くない方だよね?
 料理もしっかり食べて。
 今日は僕の好物ばかりで申し訳ないけど。
 ピザが絶品なんだ!」

このあと、出てくる料理を見たらもしかしたら、僕と此処で昔会っていたのを気付くかもしれない。
それでも良いと思ったからあのメニューをお願いした。
君の家族の思い出を少しでも共有したいし、あの頃の思い出を大切にしている人が他にもいることを伝えたい…僕のわがままかも知れないが。
もし、彼女が気付いたとしても軽く受け流して食事に集中しもらい、デザートまでお預け。
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