その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

私には『人を見る目』というものが、全くと言っていいほど備わっていない。

多少誰でも標準装備で持っていそうな『あの人苦手だな』とか『あの人仲良くなれそうだな』という最初に会った時の直感が、ことごとく外れるのだ。


中学に上がった頃、実家の隣に引っ越してきた一家の一人娘、奈美。
どこのヤンキーだってくらい眉が細く、制服のスカートはとんでもなく短い。中学生にしては濃い化粧。
言葉遣いも雑で、絶対仲良くなれないと思っていた。
しかし、蓋を開けてみれば今や10年来の親友だ。

高校1年の入学式、胸に花を付けてくれた2つ上の先輩に一目惚れした。
とても優しそうで、15歳の私から見たら18歳の先輩はとても大人に見えた。
少しでも近付きたくて、彼がバイトしていた学校から少し遠いファーストフード店に友達と通ったりもした。
紳士的で素敵で、こんな人が彼氏だったらと憧れていた。
しかし半年後、その先輩は窃盗で捕まり退学した。

前の職場でも、私の人の見る目の無さで散々な思いをした。
賢治も美香も新人研修であっという間に仲良くなった同期。きっと楽しい職場になるだろうと胸をわくわく高鳴らせていたというのに。

私の中で完全に、『第一印象が良いほど悪い人で、第一印象が悪いほど良い人』だという方程式が出来上がっていた。

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