2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~【リニューアル版】
樹のその言葉にビクッとして、私は2人から離れた。


「僕は……僕は柚葉が好きだ。でもやっぱり……お前のこと……殴れないよ」


襟を掴む手が少し緩んだ。


「頼む、柊、俺を殴ってくれ!」


「樹……。む、無理だよ。僕は情けないな、弟を殴ろうとするなんて。本当、最低だ」


柊君はそう言うと、ゆっくりとこぶしを下ろし、樹から離れた。


そして、柊君は……泣いた。
床に四つん這いになって、とても悲しそうな声で。


その姿を見てたら、涙が止まらなかった。
柊君、ごめん、本当にごめんね。あなたは、本当に優しくて素敵な人だったよ。ただ、恋愛感が合わなかっただけ。


今はすごく……感謝してるから。
だから、絶対に、絶対に幸せになってほしい。
たとえどんな恋愛をしたとしても、柊君が毎日笑っていられるように……
私は本気でそう願ってる。


「悪かったな、樹。今度こそ柚葉のこと頼んだよ。本当はここに来る前からこうなることはわかってた。柚葉の気持ちが、もう僕にはなくて、樹にあることを。でも、何か……それが悔しくて……本当に情けなくて。ごめん」
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