お前の隣は俺だけのもの。
「自己紹介しろっ!」



橘先生に再び怒られる私。

転校早々、怒られる私ってなんなの。


いや。

私が怒られたのは“彼”のせいだ。

“彼”が窓際できれいに微笑んでいるから怒られたんだ。



「あのなぁ。このクラスに“九条 碧”が居るからって、そんなに驚くと失礼だぞ?」



そう。

私は、このクラスに“九条 碧”が居たから驚いているのだ。


九条 碧は、芸能人なのだ。

雑誌の表紙を飾るのは当たり前。

今は俳優活動もしていて、大ブレイク中なのだ。

可愛い系で売れていて、“王子様”とファンから呼ばれるほどの美男子。

“ふわふわ系イケメン”という言葉が流行るくらい、有名な彼。

そんな彼を、テレビで見ない日はないのだ。



「岩倉っ! 人を指差すな!」

「すみませんっ! でもっ、」



何度目のお叱りだろうか。

今日1番の大きな怒鳴り声に、伸ばしていた手を下ろす。



「でも、じゃないだろうが! 自己紹介しろ!」

「だって、」

「だって、じゃない!」

「はいぃっ!」



怖いよ。

怖いよ、この先生。

私のパパとママより怖いって!

パパとママも怖いけど!
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