お前の隣は俺だけのもの。
私は半泣き状態になりながら、自己紹介をする。

もう、なんで自分が泣いているのか分からない。



「岩倉 陽菜、です。好きなことは1人カラオケで、得意なことはカラオケ採点で95点を出すこと……。というか、95点以外出なくて、面白みのない奴です」



思わず出た自虐ネタに教室から笑いが起こる。



「わざわざ“1人カラオケ”って言う?」

「95点って自慢ー?」

「今度カラオケ行こうよー」



優しい笑いなのか、バカにされている笑いなのか、私には分からないけど。



「あとは、読書が好きです。それから料理と、」

「はい、自己紹介、終わりなー」

「えっ!」



橘先生が私の自己紹介をさえぎる。


酷くないですか!?

私、緊張しているのに一生懸命、自己紹介したんですよ!?


怒鳴られるし、さえぎられるし、私ってば本当にかわいそう。

かわいそうすぎて、もう涙が出ないよ。

まあ、いいけど。



「岩倉の席は……」



橘先生は教室を見渡してから、言葉を詰まらせた。
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