先生がいてくれるなら③【完】
──そんな俺の黒い思惑に気付かない立花は、俺が車のドアを開けると助手席のシートへと身体を滑り込ませた。
炎天下の中、海を見ながら何を考えていたんだろう?
暑さで頬が赤くなってて、可愛い。
俺たちの関係がこんな風じゃなければ、抱き締めてキスしてるところだ。
そんな邪念を何とか頭から追い払う。
「……何から話そうかな」
立花には色々言わなきゃならないことがあるけど、やっぱり高峰の話からだよなぁ。
俺が高峰の名前を口にしても、立花は特に何の反応もせず、ただじっと運転しながら話をする俺の横顔を見つめている。
俺は、前の学校で高峰との間にどんな事があったのかを全て話した。
高峰と向き合ってこなかったことを今は本当に後悔している、と告げる。
そして、高峰がしたことを教えて欲しい、と改めて言うと、俺の言葉を遮るように──
「先生、もう良いじゃないですか、全部終わったんです」
そう言って、意志の強そうな目で俺を見つめていた。
そして、「──全部、終わったんです」と、繰り返す……。
俺は思わず顔を顰めて「終わったって、……何を指して言ってる?」と尋ねると、全部、と答えが返ってくる。
「俺とお前の事もか?」
「……そうです」
そんな事させるか。
前方の信号が赤へと変わり、今まで俺の顔を見ながら話していた立花が俺と目を合わせないように、さっと視線を逸らす。
俺が何を言っても、もうこっちを見ないし、口も開かなくなってしまった。
俺は、あの別れ話で語ったお前の言葉を、お前の本心だとは思いたくないんだよ。
否定して欲しいんだ。
──だが、立花は何も言わない。