先生がいてくれるなら③【完】

「立花。あの時お前が言った言葉が本心じゃ無いって、ちゃんと分かってるから……」


そうでなきゃ、辻褄が合わない。


たとえお前が自分よりも人を優先するお節介なヤツだとしても、だ。



「ごめんな。きっと辛い思いをさせた。それと、……ありがとう」



俺は立花を抱き締める手を少し緩め、彼女の頬にキスをした。


たったそれだけで頬も耳も真っ赤になるのは、相変わらずだ。


そっと表情を窺うと、赤く染まる頬を少し緩ませている。


……そんな反応のお陰で、全部分かったよ、お前の気持ち。


顔に出やすいってのは短所でもあるけど、こう言う時に役に立つんだな。


何とも思ってないヤツに抱き締められて頬にキスされても、お前はきっとこんな表情をしたりしない。


……俺だから、だろ?


そう自惚れても良いんだよな?



「……先生、さっきから、ずるすぎます……」


「良いんだよ、恋愛はずるい方の勝ちだから」


「……初耳です」


「んじゃ、覚えといて。お前じゃ一生俺に勝てないから」


「……もうっ」



立花が俺の胸に額を押しつけて来るのが嬉しくて、何よりも愛おしくて堪らない。



「ここがお前の居場所だろ? おかえり、立花」



ギュッと抱き締めてそう言うと、諦めたようにそっと目を伏せる。


そして──



「…………ただいま、先生」



返ってきた小さな声に、俺は頷き、抱き締めていた腕を緩めて──


彼女にそっと……、優しく口づけた────。




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