先生がいてくれるなら③【完】

「……お前知ってたっけ？　俺があいつ嫌いなの」

「知りませんでしたけど、多分そうだろうなとは思いました」

「分かってて言うんだ、それ」

「……この約束が嫌なら、私はこれ以上話しませんけど」


私がそう言うと先生は俯いて、額に自らの手の平を押しつけて考え込んでしまった。


先生は今の高峰さんを知らないから、相当な葛藤だろうと思う。


私だって初めて会った時の彼女のままだったら、これから先友人として関わっていこうなんて思ったりしないに違いないし。



先生はしばらく下を向いたまま考え込んでいたけど、小さなため息をはき出した後、首をゆるりと振って顔を上げた。


……先生、悩んでる姿も素敵なんて、反則でしょ。



「……お前、強くなりすぎ」

「先生ひどい。悩んだ挙げ句、第一声がそれですか？」

「仕方ねぇじゃん。お前がこんなに強くなるのは計算外なんだよ」

「……。私は最初っから結構こんな感じですけど……」

「そうだったかなぁ……。とりあえず、分かった、約束する」


あまりにも嫌そうに言う先生に私は思わず眉根を寄せてしまったけど、“とりあえず” 約束してもらえたのでヨシとしますか。