先生がいてくれるなら③【完】
キスはせずに、額同士をコツンとくっつけて、ゆっくりと目を開けた立花と視線を交わす。
「……キスされると思った?」
そう問うと、頬が赤く染まり、だけど目を逸らすことなく、むしろ覗き込んでくるように見つめられ……俺は堪らず、立花の赤く染まった頬を撫で、柔らかくて甘い唇を指でそろりとなぞった。
「……それ、誘ってんの?」
だって、そうとしか思えない、潤む瞳で俺を見つめて来るなんて……。
何か返事をしようとしたらしいけど、それを言わせる前に立花の唇を奪った。
食むような口づけを、何度も角度を変えて与え続けると、立花は呼吸が苦しくなってきたのか、抗議の声を上げる。
それでもやめずに立花の唇を甘噛みしていると、薄く開いた目から涙がひと筋こぼれ落ちるのが見えた。
俺が唇を解放してやると、はぁ、はぁ、と呼吸を再開する。
「なんでいつも息止めてんの」
笑いながら立花の頭をグシャグシャと撫で回してやった。
「そんなんじゃ、いつまで経っても大人のキス出来ないよな」
俺がそう言って笑うと、肩で息をしながらとろりとした表情をこちらに向ける。
触れるだけのキスさえまともに受け流せない立花には、“大人のキス” がどんなものなのかを想像することすら難しいらしい。
それを分かっていて、「……してみる? 大人のキス」なんて言ってしまう俺も、相当意地が悪いと思う。
俺が立花の顔を覗き込んで答えを待つと、赤らんだ頬、とろんとして潤んだ瞳をこちらに向けたまま、ゆるゆると首を振って、ますます俺を煽った。