君に伝えたかったこと
今日も朝から始まった仕事が、ようやく一息ついたのは午後3時を回った頃だった。

(ったくよ。もっとチャキチャキ仕事進めてくれねーかなぁ)

段取りの悪い編集者に付き合ったおかげで、お昼過ぎに終わる予定の仕事が夕方近くまでずれ込んでしまったことを一人毒づいていた。

(結局、まるまる一日仕事なんだよな)

ぬるくなった缶コーヒーを一気飲み干した。

(さて、次の打ち合わせに行きますか)

パソコンが入った大きなバッグを肩に担ぐと、地下鉄の階段を一気に駆け下りる。

地下鉄から地上に出るころすっかり日も暮れていた。

大小あわせて100以上の出版社が林立する街。この場所は夕闇が迫る時間になっても、多くの出版人が行きかい、その活気は夜中まで収まることはない。

そんなギラギラとした空間の中でひときわ目立つ銀色の巨大ビル、これが最後の打ち合わせ場所だ。
< 15 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop