君に伝えたかったこと

打ち合わせ

このビルのエントランスには屈強な警備員が四六時中仁王立ちしている。
首からぶら下げた入館許可証を、ガードマンは微動だにせずチラっと見る。
そして、わずかに会釈をしてまたもとの姿勢に戻った。


向かったのは12階にある編集部。
退社する人の流れに逆らうようにエレベーターの前で扉が開くのを待っていた。

ポーン

電子音がエレベーターの到着を告げた。

そしてドアが開くと同時に帰路へつく社員たちがいっせいに溢れ出してくる。

芳樹はその集団の中にひとりの女性を見つけ声を掛けた。

「さおりさん!」

急に名前を呼ばれた女性は少し驚いたように振り返るが、視界の中に芳樹の姿を見つけると表情を崩して軽く手を上げながら近づいてくる。

今夜打ち合わせをする編集者だった。



「あ、ちょうどよかった。買い物に出ようと思ってたんだ。おなかも減ったし、打ち合わせがてら外で食事しない?」
「オッケーです」
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