冷徹ドクターに捨てられたはずが、赤ちゃんごと溺愛抱擁されています
 三人で食べている決して豪華とは言えない食事がこんなにも美味しく感じるなんて。目の前でそっくりな顔で大きな口を開けるふたりを見て、なんとも言えない気持ちがわたしの胸を温かくしてくれた。


「よく寝てるよ」

 隣の部屋のベッドに悠翔を寝かせた翔平がリビングに戻ってきた。

「コーヒーはどう? お酒でもと言いたいけど、ここにはないから」

「車だからコーヒーがいい」

 近くのコインパーキングに停めてここまで来たらしい。わたしがコーヒーを淹れている間、翔平は部屋に飾ってある悠翔の描いた絵を見ていた。大きな丸に点がふたつに縦棒と横棒。こころなしか横棒は少し歪曲しているように見える。

「それ、わたしだって」

「タイトルに家族の絵ってある」

「……そうだね」

 園で飾られているときには、両親や兄弟ペットまで描いている子もいたが、悠翔が描いたのはわたしだけ。当たり前だけれど……そこに彼の姿はない。

 切なげな横顔を見てこれからのことを、きちんと彼と話し合うと決意した。

 濃いめのコーヒーにミルクなし。マグカップを差し出すと翔平が受け取りひと口飲んで「うまい」と言いながらダイニングのテーブルに座った。

 わたしも向かいに座ると、なにから話をしていいのか迷う。テーブルの上に視線を走らせていると先に話をはじめたのは翔平だった。

「とりあえず一週間、俺と接してみて悠翔はどう思っているだろうな」

 翔平がいないときの様子を思い出してみる。

「もともと人懐っこいっていうのもあるけど、翔平の顔見ると喜ぶようになってきた」

 保育園や祖父母以外にこんなに長く過ごす相手が今までいなかったので、喜んでいるようだ。

それに翔平のプレゼント攻撃も効果抜群だと思う。

「そうか」

 短い言葉だったけれど、うれしそうに鼻の頭をかいている。彼なりに頑張ったのだろう。そのことをうれしく思う反面、あまりにも早く物事が進みすぎているような気がして、お互いの意見を早く話し合っておいた方がいいと思ったのだ。

「悠翔のことをかわいがってくれて、ありがとう」

「当然だろ、俺が父親なんだから」

「そのことなんだけど」

 わたしはひと呼吸してから翔平の顔を見た。

「悠翔の父親として接するのは理解できる。でもわたしたちはその……普通の家族ではないでしょう?」

 翔平の様子をうかがうと彼は少し考えてから口を開いた。
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