冷徹ドクターに捨てられたはずが、赤ちゃんごと溺愛抱擁されています
「瑠衣の思う、普通の家族ってなに?」

「普通は、普通だよ。絵にかいたようなシチューのCMに出てくるような家族」

「ふーん」

 彼は納得したようだけれど、不満そうだ。

「今は普通じゃないっていうのは、まあそうかもしれないけど、これから先はどうにでもできるだろう?」

「翔平はどうするつもりなの? どうしたいの?」

「家族になりたい」

 シンプルだけどそれがすべてだという言葉。きっと最後にいきつくところはそこなのだ。しかしそこに至るまでわたしたちがどういう道をたどっていくのがいいのかわからない。

「でも家族だって、多種多様でしょ?」

「だから瑠衣が思っているような家庭を作ればいい。俺と悠翔と三人で」

「三人で……」

 今日みたいな日が日常になるということか。

「でもそれって」

「俺とお前が夫婦になるってことだ、ちゃんと籍を入れて周りにも認めてもらおう。それがみんなの幸せのためだ」

 確かにそうすればわたしの言う〝シチューのCM〟に出てくるような家族になれるだろう。

 見かけは……。

 でもあの家族にあって、わたしたちのこれから築こうとしている家族にないものがある。それが欠けて家族が本当に成り立つのか、わたしにはわからない。

 翔平はわたしのこと好きになれるの? 愛することができる?

 聞きたいし聞かなければいけない。けれど喉の奥に突っかかったままで一向に声にならない。

 父も母もまた姉夫婦も、お互い愛し合って慈しみ合っている。そんな夫婦を見てきたから、愛のない夫婦がうまくいくのかわからない。

 一緒に過ごしているうちに信頼や尊敬は生まれるだろう。今だってその気持ちはある。悠翔のことだってめいっぱい愛してくれるだろう。

 でもわたしは……?

 翔平とどんな関係を築きたいと思っているの?

 翔平は悠翔に対する責任や義務でこういう話を持ち出しているに違いない。でも本当に彼は後悔しない?

 姉の話を聞いていると医師の妻の仕事は大変と聞く。結婚だって出世や病院経営のために人脈づくりのひとつと考える人だって少なくないそうだ。翔平にこの先そういうチャンスがないなんて言いきれない。

 でも……本当にうまくいくの?
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