君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 私受け身のままじゃない!

 このままじゃ、全然樹くんに私の気持ちが伝わらない。

 それに今はもう帰り道だ。

 あともう少し歩いたら、樹くんと私が別れる場所に到着してしまう。

 一度くらい積極的な行動を取りたかったのに……!

 だけどさすがにもうタイムリミットだ。

 こんな帰り道で、何を積極的になれるのだろう。

 あーあ。

 でも明日になったら、「積極的になる」っていう決意が揺らいでしまいそうな気がする。

 今日やらないと、私みたいな消極的ガールは一生消極的なままなんじゃないかな……。

 そんな風に後ろ向きになりながらも、ちらりと樹くんの方を見る私。

 すると彼の手が目に入ってきた。

 いつも少し冷たくて、私よりも一回り大きくて。

 ――そしていつも私の手のひらを、優しく包み込んでくれる。

 それを私が知っているのは、ふとした瞬間に、樹くんが私の手を握ってくれるから。

 保健室から抜け出して遊びに行こうとした時、映画館で私が泣きそうになってしまった時。

 いろいろな瞬間が思い出されてしまった。

 いつも樹くんの方から、私と手を繋いでくれる。

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