君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 まず最初に浮かんだのが、そのことだった。

 ノートの彼は少し前にこんなことを書いていたのだ。

 「病気なったから好きな子を諦めないといけない」って。

 まさか……?


「嘘、だよね?」


 遅刻や早退、学校を休む回数が多い樹くん。

 少し前に具合悪そうにしてしゃがみこんでいたし、今だって顔色が悪い。

 思い当たる節がありすぎて、恐怖から心臓がドクドクと波打つ。

 嘘であって欲しい。

 そんな願望を込めて私は樹くんに尋ねたのだった。

 ――だけど、樹くんは。


「……マジかよ。栞が俺を……。そんなん俺、どうしたらいいかわかねーじゃん」


 樹くんは悲し気に微笑んで、そんなことを言ったんだ。

 私の言葉を否定しなかった。

 もし違うのだとしたら、優しい彼なら私を不安にさせないために「病気じゃないよ」ってはっきり言ってくれるはずだ。

 でもそう言わなかった。

 ――それってつまり、樹くんが病気っていうことだ。

 そしてさらに、彼が言っている意味がわからなかった。

 どうしたらいいかわかんないって、どういうことなのだろう。


「樹くん……?」

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