君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
「そんなこと栞に言われたら……。俺嬉しくなっちゃうじゃん。だけどこの後、どうしたら……」


 言葉の途中で、樹くんは「うっ」と苦しそうに呻いた。

 そしてその場にしゃがみ込んでしまう。


「樹くん?」


 私が駆け寄ると、樹くんは頭を抑えながら苦悶の表情をしていた。

 顔面は蒼白で、冷や汗がたらたらと流れている。

 彼が何らかの激痛に襲われていることが、一目でわかる状態だった。


「樹くん! だ、大丈夫? ね、ねえ!」


 突然のことにうろたえてしまう私。

 樹くんはそんな私にしがみついてきた。

 私は彼の頭をさすりながら、必死にどうすればいいのかを考えていた。

 え、えっと保健室……じゃなかった、病院!?

 連れて行く!?

 い、いや救急車かな!?

 きゅ、救急車って何番だっけ!?

 こんな非常事態今までに体験したことがなかった私が、混乱していると。


「樹!? 栞ちゃん、どうしたの!?」


 偶然通りかかったらしい悟くんが、声をかけてくれた。

 前も樹くんの家の近くでたまたま会ったことがあったから、きっと帰り道が一緒なのだろう。


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