君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように

ずっと一緒だよ




 手術の日。

 私は手術室の前の長椅子で、樹くんのご両親と悟くんと一緒に、手術が終わるのを待った。


「栞ちゃん。結構長くかかるみたいだからさ。談話室で休んだり、一度家に帰ってもいいんだよ」


 樹くんのお父さんは、私に気を遣ってそう言ってくれたけど、私は首を横に振った。


「樹くんの近くで待ちたいんです。本当は手術室に入りたいくらい……。あ、でもそれは樹くんに嫌がられちゃうかな」


 冗談のつもりで言ったのに、それを聞いた樹くんのお父さんとお母さんは涙ぐんだ。


「樹は女の子を見る目があるなあ……。俺と一緒で」

「……も、もうお父さんったら」


 お母さんはまんざらでもないようで、少し照れたように言った。

 こんな時でも明るさを忘れないふたりが、樹くんを彷彿させる。

 私はくすりと笑った。


「栞ちゃん。本当にいろいろ……もう本当にいろいろ、ありがとうね」
 

 お母さんが私をまっすぐと見つめて言う。

 お礼を言われるようなことを何かした記憶はないけれど、私の存在が少しでも役に立てられたのなら、こんなに嬉しいことはない。


「いえ……。樹くんにいろいろもらっているのは、私の方ですから」


 私は抱えている図書館ノートに目を落としながら言う。

 今日は私たちの運命の日なのだ。

 だから、私たちをずっと見守ってくれていたこのノートにも、傍にいて欲しかった。


「それ、何?」


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