君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 でもこの一年いろんなことがあって、そのことを忘れていた。

 さっき本棚の中にあったこの本をたまたま見つけて、読もうと思っていたことを思い出して、それで今読んでいるというわけ。

 内容はタイトルで想像できるように、記憶喪失の話だった。

 ストーリーの中盤でヒーローがヒロインのことだけの記憶を失ってしまう。

 しかもふたりに課せられた試練はそれだけじゃなくて、さまざまな不幸がふたりを襲う。

 紆余曲折を経て、引き裂かれたふたり。

 だけど心から愛し合っている、ふたり。

 ――結ばれてほしい。

 これだけ愛し合っているのだから。

 神様、どうかどうか。

 なんて、フィクションのストーリーなのに私は本気でそう祈ってしまった。

 だって、自分の状況と重なってしまったから。

 記憶を失ったヒーローが、病室で眠っていた樹くんの姿を彷彿させたから。

 手元に持っていたしおりに、樹くんと撮ったプリクラが貼ってあったから、余計にそう思えてしまった。

 読み進めて、小説は最終章になった。

 ふたりは果たして再会できるのか、結ばれるのか。

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