私があなたを殺してあげる
「私では、智明を笑顔にすることはできない。できなかったんです・・・」

 あゆむさんはずっと、智明を笑顔にするために別れてから五年間もの間、陰で支え頑張って来たのだと、その後の話を聞いて知った。いや、付き合っている頃から考えるともっと長い時間だろう。それでも智明を笑顔にすることはできなかったと、だから私に頼みに来たのだと。


「本当にいいんですか?」

 もう一度、あゆむさんの気持ちを確かめる。あゆむさんは小さく、でも力強く頷いた。


「わかりました・・・ 私に出来ることは全力でやります」

「そうですか、よかった・・・」

 そんな嬉しそうな笑顔で・・・ 本当に智明を大切に思っているんだ。


「あゆむさん、智明の家に事、父親のこと、詳しく聞かせてもらえませんか? 私、ちゃんと知っておきたいんです」

「そうですね、わかりました・・・ 智明の実家には多額の借金があることはご存知ですか?」

「はい、知ってます」

「智明は、家の仕事を手伝い出してからもう十二年近くにになります。そしてもう十年、給料は貰っていません。それどころか貯めていた貯金もすべて父親に渡しましたし、夜中バイトしたお金も半分近くは渡していると思います」

「十年も給料を貰っていないんですか? それに貯金やバイトのお金までも渡してる?」

「はい」

 衝撃だった、智明がそんな状況にいたなんて。普通では考えられないことだ。

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