悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。




*****



夢の中で意識が覚醒する場所、時間はいろいろだ。
今日、意識が覚醒した場所は豪華絢爛な私の部屋だった。
私は今、裸でベッドに寝転がっており、窓から溢れる日差しから今が朝なのだと予想ができる。

先程まで夜だったのに、夢の中では朝となると時間感覚がおかしくなりそうだが、それについては半年もこんな感覚の中で生活していたのでさすがにもう慣れた。

ここでの時間はたった数時間。所詮私が見ている夢なのだから何日も、何ヶ月もは望まない。
だが、このたった数時間がいつも私を満たしてくれていた。


ここでの私はとある異世界の中にある、とある国のたった1人のお姫様で、5歳ほど歳の離れた美しく、優秀な兄が2人いる。
そして私も彼らと血が繋がっているだけあり、それはそれは美しい…というか彼らとはそっくりだが、現実と全く変わらない姿をしていた。

アッシュグレーの胸元まで伸びだサラサラの髪に気の強そうな少し釣り上がった猫目の強気美女、これが私の容姿だ。

自分で言うのもなんだが、私は美女だ。これは紛うことなき事実である。


「おはよう、エマ」


私が起きたことに気がついたようで隣で寝ていた私に負けず劣らず美しい男、リアムが私に優しく声をかけてきた。

声の方へとくるりと体を向ける。


「おはよう。リアム」


そして私はリアムににっこりと微笑んでいつものように挨拶をした。

私の目の前にいるリアムの格好も裸だ。
この状況からしておそらく事後なのだろう。

リアムの容姿は金髪碧眼。絵本の中から出てきた王子様のような麗しい見た目で甘いマスクをした美青年。年齢は私より一つ上だ。


彼こそが夢の中にいる私の3人の恋人の内の1人である。







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